交通遺産をめぐる

関西を中心に隧道,橋梁,廃道などの交通遺産を探索し,「いま」の姿をレポートしています.レポートマップはトップページにあります.

大津市の富川橋 (2021. 6. 13.)

大津市里山に架かるRCゲルバー橋を訪ねた.

目次

はじめに

桁橋にも色々種類があるが,私はその中でもゲルバー桁橋が一番好きだ.ゲルバー桁というのは,以下の図のように片持ち (カンチレバー) の桁の間で,別の桁をヒンジで接合して支えるものだ.

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※本図は「老朽化したゲルバー形式橋梁の補修について」1 の図-3を引用している. 

 

ゲルバー桁橋は大正〜昭和初期頃に多く造られた.その利点のひとつは,吊桁部分を長く取ることで,トラスなどの構造を用いずとも大きな支間長 (橋脚間の距離) を実現できる ことである 1.以前訪れた五條市の (旧) 下田橋も,鉄筋コンクリート (RC) ゲルバー橋だった.

写真は2021年5月4日に撮影したもの.印を付けた箇所をよく見ると,桁の継ぎ目があることがわかる.

 

そんなRCゲルバー橋だが,現代において新しく造られることは皆無である.それはおそらく,継ぎ目の部分が構造上の弱点となること 1,また技術発展によって通常の連続桁でも大きな支間の橋を架けられるようになったことによるものと思われる.さらに現存する橋も建造から70年〜100年が経過し,老朽化によって架け換え・撤去される例が後を絶たない.決して珍しい構造ではないから保存の対象ともなりにくい.

 

本記事でレポートする富川橋は,大津市大石富川町に架かる,昭和初期の典型的なRCゲルバー橋である.本橋を知るきっかけとなったのは,岐阜大学大津市がドローンとロボットカメラを使って橋梁点検を実施するという記事 2 で,その実証実験に本橋が利用されていた.現存するRCゲルバー橋を探していて偶然見つけたその記事の写真に惹かれ,また自宅からそれほど遠いわけでもなかったので,居ても立っても居られずに訪問した.

本編

今回の探索は日曜日の夕方に実施した.梅雨空で出かけにくい日だったが,午後になって雨が止んだと記憶している.国道307号で宇治田原町から信楽に抜け,国道422号に入ってしばらくバイパスを走り,富川トンネルを出て1kmほど先で右折するとすぐに本橋である.

 

渡った先で道が少し広くなっていたので,そこに車を停めて橋を観察した.

富川橋.昭和13年 (1928年) 竣工 2 .ゲルバー橋としては典型的な,曲線を描く桁が好ましい.高欄はシンプルで無装飾だがオリジナルのものと思われ,古色が溢れている.

 

本橋の橋脚は,

水際をできるだけ避けて建てられている.流路を阻害しないための工夫の結果,ゲルバー桁が必要な程度には支間長が長くなったものと思われる.

 

橋上の風景.

桁の継ぎ目部分は舗装が避けられており,構造がよくわかる.

 

親柱.

4本全て残っていたが,いずれも銘板はなく,文字が刻まれていたかどうかも判然としなかった.

 

代わりにこんなものが掲げられていた.

河川占有の許可証.本橋が「富川橋」であるとようやく確定した.この手の掲示は道路橋においてはあまり見かけないような気がする.橋と道路は市が,河川は県がそれぞれ管理しているということだろうか.

 

最後に,横から.

特別珍しい要素はない橋だが,昭和初期という時代性をよく留める逸品だった.

 

橋梁点検のモデルケースとなっているということは,相応の老朽化が進んでいるものと思われる.事実この写真などを見ると,手前の橋脚の下部に,コンクリートの表面の剥離が見られる.橋の近くには集落もあるから,直ちに架換えとはならないと思うが,それでも先行きは見通せない.研究目的でも良いから末永く保存されてほしいものだ.

参考文献

  1. 湊川裕介,田中達也 (2018) "老朽化したゲルバー形式橋梁の補修について" 平成30年度近畿地方整備局研究発表会論文集,一般部門(安全・安心)Ⅰ,No. 7,国土交通省近畿地方整備局,2021年7月29日閲覧.
  2. 羽田野英明 (2019) "滋賀県大津市でロボット技術を利用した橋梁点検の実証試験 | 岐阜大学新技術地域実装支援" 2021年7月29日閲覧.