交通遺産をめぐる

隧道,橋梁,廃道などの交通に関する土木遺産を探索し,「いま」の姿をレポートしています.レポートマップはトップページにあります.

(旧) 奈良県道118号御所高取線 前川橋 (2021. 10. 5.)

奈良県御所市 (旧掖上村).満願寺川に架かる戦前製のRCラーメン橋.

 

前川橋は,奈良県中部の御所市を流れる曽我川支流・満願寺川に架かる橋である.県道御所高取線の旧道にあたる.名称の由来は不明.満願寺川が前川とも呼ばれていたのか,周囲に前川という字があったのか.

場所: [34.459710, 135.758490] (世界測地系).

 

左岸 (西),右岸 (東)からみた橋上の景.影で見にくくて申し訳ないが,古い親柱と高欄をそのまま留めているのが素晴らしい.

 

左岸上流の親柱.形状は尖塔形.力強い筆致で,正面に「前川橋」,側面に「昭和八年三月架換」と刻む.時期的に,時局匡救事業として先代の橋 (木橋の可能性大) から架け換えられたのかもしれない.

 

左岸下流の親柱.わかりにくいが「満願寺川」と刻まれている.

 

右岸上流の親柱には「まんぐわんじかは」.

 

右岸下流の親柱には「まえかははし」(多分).

 

高欄.親柱と同じく尖塔形の窓が連なる.いかにも昭和初期の意匠でまことに好ましい.

 

上流から見る前川橋,昭和8年 (1933) 竣工.この時代には比較的珍しかった,橋台と桁を剛結したRCラーメン橋 (門型) である.

 

下流からの景.

 

本橋の架設と同じ頃には,香芝市の五位堂橋や葛城市の県道当麻寺線の橋梁2本でもRC門型ラーメン橋が採用されている (別記事にてレポート予定).奈良県下での流行り,というより同一人物が設計に関わったのかもしれない.