交通遺産をめぐる

隧道,橋梁,廃道などの交通に関する土木遺産を探索し,「いま」の姿をレポートしています.レポートマップはトップページにあります.

伊賀市高尾の出合大橋と出合橋 (2021. 7. 11.)

伊賀市の橋シリーズ第5弾.清流の「出合」の地に並ぶ2本の古橋をレポートする.

 

中西橋を後にして西に進み,三重県道29号・県道691号を経由して伊賀市高尾の地に入った.「小川内橋」で前深瀬川を渡って左折し,県道39号を進む.前深瀬川は木津川や淀川の上流にあたる一級河川だが,このあたりは清い水の流れる渓谷となっている.「ほたるのふる里公園」なる公園もあり,良い意味で私の馴染みのある下流域とは趣が異なっている.

 

さて,前深瀬川に沿って南下する県道39号は,「小川内橋」から2kmほどのところで左岸から右岸に渡る.そこはちょうど,前深瀬川が支流の床並川と合流する地点であり,それぞれを跨ぐ橋が2本連続で架かっている.いったん両者を通り過ぎ,東側の路肩に車を停めて探索を開始した.

 

まずは東側から正対.

逆光だが,2本の橋が連なっているのがわかるだろうか.

 

手前側,前深瀬川の本流に架かる橋は,

「出合大橋」「であひおほはし」.残り2本の親柱にも同じ文字が刻まれていた.川の合流点ゆえの「出合」であることは明らかだが,一帯の字名でもあるようだ.

 

また「出合大橋」の親柱の路面側には,

竣工時期が刻まれていたが,読み取りづらい.ただ,県による橋梁点検結果 1 によると昭和8年 (1933年) 竣工だそうだ.たしかに言われてみれば「昭和八年」と読めるような気がする.

 

横からも眺めてみよう.まずは下流側.

2径間のRC桁橋となっている.古橋らしい重厚感と,高欄に連なるアーチ型の窓が好ましい.

 

上流側.

日当たりが良好すぎるせいで,蔦に覆われている.

 

西詰からの振り返り.

おそらく架設当初から拡幅されたりしておらず,桁や橋脚もそのままと思われる.旧状をよく留める優良物件だった.

 

さて,次へ行こう.こちらは支流の床並川に架かる橋で,

「出合橋」「であひはし」と思われる.親柱の意匠は「大橋」と同一だ.

 

竣工時期は,

「昭和八年十一月架換」だろうか?少なくとも年については橋梁点検結果 1 と合致している.「出合大橋」と同じ事業で架けられた (架け換えられた) とみられるが,そんな両橋が類似した名前というのも少々珍しいような (旧橋が「〇〇橋」,新橋が「〇〇大橋」というのはよくあるが).

 

上流側から.

川幅がやや狭いためか無橋脚の桁橋となっている.意匠は「大橋」と同様だが,こちらは蔦が絡むことなく綺麗な状態を保っている.

 

渡って西詰からの振り返り.

こちらも旧状をよく留めるが,下流側 (向かって左側) の親柱は2本とも失われていた.

 

これにてこの日予定していた探索は全て終了した.しかしその帰り道,また良い橋を見つけることができた.その模様は次の記事でレポートする.

参考文献

  1. 三重県 (2020) "【三重県】橋梁点検結果" 2021年9月5日閲覧.