交通遺産をめぐる

隧道,橋梁,廃道などの交通に関する土木遺産を探索し,「いま」の姿をレポートしています.レポートマップはトップページにあります.

千早洞 (2021. 2. 25.)

大阪府唯一の「村」・千早赤阪村に眠る廃隧道,その名も千早洞を訪ねた.

この日はメンクリの定期通院の後,河内長野駅から金剛山行きの南海バスに乗り込んだ.この路線に乗るのは2回目だ.前回は5年以上前,当時の友人と共に金剛山に登った.今回は登山口やロープウェイ乗り場より手前の千早大橋バス停で下車.橋の脇の府道214号の旧道へ入る.

これは旧道に入ってすぐの看板.このように朽ちた道路標識には何とも言えない味わいがある.後ろの木々の荒れ具合も含めて廃道のように見えるが,この部分は未だ現役で,実際に通行する車も多かった.もっとも,どの車も「警笛鳴らせ」を守ってはいなかったが….

この看板を超えると,すぐ右側に進むべき道が現れる.

どう見てもハイキングコースだが,現道のトンネルが開通するまではここが車道だったらしい.にわかには信じがたいが….
なお,この入口付近には,登山者は路上ではなく登山口近くの駐車場を使うように,という貼り紙があった.やはり公共交通機関で来て正解だったようだ.

先に進むと道路の状況は更に酷くなる.

倒木が天然のバリケードと化している.四輪車はここまでか.

おびただしい数の倒木.どう見ても廃道状態.これが府道だとは思えない (指定解除されないのだろうか?).

倒木を超えたり潜ったり,水の流れをじゃぶじゃぶ超えたりしつつだったが,10分もしないうちに,目指すものが現れた.

たまげたね.胸壁はレンガ,アーチや壁柱,帯石は石という凝った造り.
立派な扁額も残っている.

バリケードの前の看板は,旧道入口にあったものと同様に「老朽化のため全面通行止」となっていたようだが,破壊されてしまっている.

バリケードを破壊したのは坑門前の土砂崩れであろう.より手前から隧道を見てみると,流入した土砂が坑口の本来の高さの1/3から半分ほどまで堆積していることがわかる.
向かって左側は明らかに新しい補修がなされているが,右側は自然のままなので,そこから崩れているようだ.さらに崩落は現在進行形で続いているようで,私が訪問した時も右側からの小さな落石が絶え間なく続いていた.この分だと何年かすると坑口全体が埋まってしまう可能性もあると思った.下はその右側斜面を写した一枚.

木が不思議な形に曲がってしまっている.

一方,隧道内部は,老朽化というほど悪い状態だとは思えなかった.バリケードの隙間から懐中電灯を照らして見てみたが,目立った崩落などは見受けられなかった.むしろここまでの倒木だらけの道や,坑口前の土砂崩れの方が危険に思える.内部の写真は撮ろうと思ったがスマホカメラには厳しいようで,ブレブレの虚無しか映らなかったので諦めた.スマホカメラだとトンネルの外観すら手ブレを抑えるのに苦労しているし,良い撮影機材が欲しくなってきたな….

先ほど,隧道に向かって左側の補修は新しいと書いたが,よく見ると隧道の翼壁に接する部分は,もっと古そうな石垣となっていた. 歴史の積み重ねを感じられて面白い.そして石垣の中にひとつだけ,どういうわけか赤茶けた表面が露出している石があり,不思議なほど鮮やかであった.


なんだかんだ30分以上この場に滞在し,名残惜しくも下山した.帰りは富田林まで金剛バスを利用した.この路線の存在は当日バス停で初めて知ったのだが,いい具合の時間に来てくれてよかった.

2021. 5. 1. 追記

一部写真を差し替えました.