黒田隧道から次の目的地に向かう途中,短い隧道をくぐったので,予定外ではあるが車を止めて見てきた.
この隧道があるのは,由良川沿いを走る京都府道12号である.現役隧道で,アクセスに特段の難はない.さらに隧道の前後に,元バス停と思われる待避スペースがあるので,車を止めることも容易であった.
東側坑門.
大野隧道.昭和33年 (1958年) 竣工 1.坑門の意匠はシンプルながら,迫石状の模様を備えているのが好ましい.同時期に造られた和束隧道や湯船隧道 (写真はないが何度か通ったことがある) と似ているので,時代の流行りだったのかもしれない.
扁額.
「瑞雲洞」.風流な名前である.すぐ脇が由良川なので,川から立ち昇る靄を,吉祥の瑞雲に見立てたのだと思われる.戦後らしく左書きだが,最近のトンネルには見られない雅号を戴いているのは素晴らしい.
西側坑門と扁額.
こちらは「大野隧道」.写真では見にくいが,その右に名前も記されており,時の京都府知事・蜷川虎三の揮毫であることがわかる.
坑門から内部を覗いて.
比較的新しい隧道とはいえ,竣工から63年が経っており,それなりの痛み具合である.
洞内に竣工銘板などがあったのかもしれないが,一世代前の隧道らしく歩道がなく,またそこそこ車が通る道なので,徒歩での入洞は見送った.なお,隧道の外側には迂回する桟橋があるので,歩行者の通行には支障がない.
小規模ながら良い隧道であった.
参考文献
- 日本の廃道・編 (刊行年不明) "隧道データベース" 2021年5月6日閲覧.