交通遺産をめぐる

隧道,橋梁,廃道などの交通に関する土木遺産を探索し,「いま」の姿をレポートしています.レポートマップはトップページにあります.

京都市 二条大橋 (2023. 3. 1.)

京都市中京区〜左京区二条通が鴨川を渡る地点に戦時下に架けられた鋼橋.

 

京都の観光地としても,京都市民の憩いの場としても親しまれる鴨川には,戦前に架けられた橋梁がいくつか現存する.二条通上に位置する二条大橋もそのひとつである.

場所: [35.01321328759676, 135.77168797000508] (世界測地系).

 

現在の二条大橋は昭和18年 (1943) 竣工.昭和10年 (1935) の京都大水害で流失した先代の木橋に代わって架けられた.京都市の主要な交通路のひとつであるという重要性からか,戦時下にもかかわらず鉄材を豊富に使う鋼橋となった.

 

2023年3月1日の夕刻,現地を訪ねた.まずは左岸の遊歩道から.

二条大橋,昭和18年 (1943) 竣工.広い川幅を2本の橋脚でスマートに渡る.

 

橋台.コンクリート造りだが,脇に石積みの壁が控えているのが洒落ている.

 

桁の近景.変断面である.おびただしい数のリベットが打たれている様が良い.

 

本橋は当初,鋼カンチレバー (ゲルバー) プレートガーダー橋であったが,平成28年 (2016) から行われた補修工事で主桁同士が連結され,連続桁橋となった.

ゲルバーの痕跡.桁の間のピンがそのまま残っている.落橋防止装置を取り付けていたと思われる四角い跡も確認できる.

 

桁に残る銘板.昭和16年 (1941) 日本橋梁製作.

 

橋脚.当初のコンクリート橋脚を新しいコンクリートで包むようにして補強されている. 

 

左岸上流からの景.

 

橋の上へ.

橋上は二車線+両側に歩道.

 

左岸下流の親柱.正面に「鴨川」側面に「昭和十八年十月竣工」.題額は見るからに新しいので,近年設置されたものであろう.

 

道路を渡って左岸上流の親柱.正面に「二條大橋」.そして側面に,

 

請負者 岡野組

主任  野口浩世

石匠  西村静馬

と刻まれている.これはおそらく昭和18年 (1943) 当初のものではないか.重要な情報である.

 

岡野組は,慶応元年から現在まで続く長い歴史を有する京都の土木業者であり,平成28年 (2016) から進められた本橋の補修工事も担当している

 

橋を渡って対岸へ.

右岸の親柱.「二條大橋」「鴨川」.後者の側面には「昭和十八年十月竣工」の額もあった.

 

右岸からの景.

 

最後に,ひとつ南の御池大橋から全景を眺める.

少ない橋脚でスマートに渡る姿は地味だが,鴨川の景観によく溶け込んでいる.