交通遺産をめぐる

隧道,橋梁,廃道などの交通に関する土木遺産を探索し,「いま」の姿をレポートしています.レポートマップはトップページにあります.

宍粟市の生谷橋 (2021. 7. 3.)

兵庫県宍粟市山崎町.渓流に架かるRC桁橋を訪ねた.

 

7月最初の土曜日となったこの日,兵庫県宍粟市から姫路市にかけての交通遺産を探索した.宍粟市を訪れた主な目的は与位の洞門だったが,その前に,地図とストリートビューで偶然見つけた本橋を探索した.

 

JR姫路駅近くのカーシェアで車を借り,姫路バイパス・播但道中国道を通って宍粟市山崎町の山崎ICまでやってきた.山奥に向かう県道429号に入り,ほどなくして伊沢川を渡るところに架かるのが本橋だ.少し離れた所に車を停め,歩いてやってきた.

 

まずは南東から.

この古色溢れる姿が素晴らしい.

 

とりわけ目を引くのはその高欄.

金属製の手すりが全面に渡って後付けされているが,欠円アーチを連ねた意匠は好ましい.

 

また,親柱はあるにはあったのだが,

こんな具合である.高欄や桁と比べるとあまりにも場違いで,明らかに後付け,それも風情のない施工である.なお,残り2本は「伊沢川」「いさわがわ」で,竣工時期の情報が得られなかったのも残念だ.

(2021. 10. 25. 追記) 「全国Q地図」に竣工時期が載っていた.昭和31年 (1956年) だそうだ.

 

当初のものと思われる高欄と後付けの親柱の隙間も,なんとか覗いてはみたのだが,

特に情報は得られなかった.隙間に懐中電灯を突っ込んだりして10分ほど格闘したのだが,ここは集落の中で,それも生活道路としてそれなりに車が通る橋なので,これ以上怪しい行動はやめておいた.

 

北東から.

ここから道路を渡って反対側,つまり橋の北西側には階段があり,川床に下りられるようになっていた.

桁下を潜って,

反対側.

桁の形状からしてゲルバー橋かもしれないと思って観察してみたのだが,吊桁の接合部やヒンジなどは特に見受けられなかった.継ぎ目もないので連続桁のようだ.

 

最後に,西からの遠望.

桁の描く緩やかな曲線と,高欄の連続する欠円アーチの組み合わせはまるで親子のようで可愛らしい.改修は残念だが,それでも本橋の美しさは健在であった.