交通遺産をめぐる

隧道,橋梁,廃道などの交通に関する土木遺産を探索し,「いま」の姿をレポートしています.レポートマップはトップページにあります.

由良谷川隧道・大沙川隧道 (2021. 3. 11.)

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土木図書館のレファレンス事例によると,前回の記事で訪問した旧長野隧道は,現存する中で二番目に古い総切石造隧道らしい.そして,最も古い「大沙川隧道」と三番目に古い「由良谷川隧道」が滋賀県にあると知り,訪問してきた.

今回訪問するのは,いずれも現役バリバリの隧道である.隧道名が川の名前となっていることからわかるように,これらは天井川の下をくぐるための隧道である.もっとも,現在は川の付け替え工事などが行われ,隧道の上に川は流れていない.そのため,目的もなく道幅を狭めるまさに無用の長物となってしまっているのだが,やはり貴重な土木遺産ということで保存されているのが有難い.

由良谷川隧道

駐車スペースの問題で,今回も公共交通機関で訪問した.JR草津線の甲西駅を出て,いかにも旧街道といった風情の旧東海道を10分ほど歩き,最初の目的地に到着した.

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由良谷川隧道.明治18年竣工,御年134歳.一片の欠けもない石積みが美しい.状態の良さは山岳トンネルと違って街中にあることや,土被りが少ない (上からかかる力が小さい) ことも関係していると思われる.手前の古びた高さ制限の標識も味わい深い.

 

現役隧道なのでもちろん通り抜けが可能.

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内部にも欠けや目立った補修の跡は見られず,素人目には非常に良い状態に思われる.

 

通り抜けて東側へ.

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こちらも美しい…

 

東側の坑門付近の路地に入ると,天井川と同じ高さに上がれる道があったので上ってみた.

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ここが隧道の真上.枯れ川であった.

大沙川隧道

由良谷川隧道を後にして,そのまま旧東海道を東に進む.徒歩約20分,だんだん疲れてきた頃に次の目的地に到着した.

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大沙川隧道.明治17年竣工,御年136歳.由良谷川隧道と比べると,石の表面がしっかりと平らに加工されており,端正な印象を受ける.扁額の文字はふくよかで読みやすい.

 

こちらも内部を通り抜けてみた.

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丁寧な石積みが美しい.

 

東側坑門へ.

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無数のツタに覆われて独特の雰囲気になっていた.石の表面が扁平だからツタが這いやすいのだろうか?それにしても古びた高さ制限の標識は良い仕事をしている…

 

こちらも隧道真上に上がってみた.東側坑門に向かって右手の斜面はなんとかなりそうだと思い,藪にまみれながら力技で登攀した.

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案の定枯れ川であった.そして2枚目右奥に,西側坑門から登ってくる歩道が設えてあることがわかった.無理に斜面をよじ登る必要はなかった…

 

大沙川隧道の上には樹齢750年の杉が生えており,「弘法杉」として隧道ともども大切にされていた.

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ここから歩道で隧道西側坑門に下りると,解説板が設置されていた.

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この後は,歩き疲れたのと時間がちょうど良かったので「吉永」バス停から湖南市営バスに乗車した.バスで御年136歳の大沙川隧道を通過するという印象的な体験をしつつ,あっという間に甲西駅に戻った.